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カテゴリー「【ヘタレ読物】ヘタレ男の青春物語」の8件の記事

2009年7月 2日 (木曜日)

断罪

男は、スキンシップというものを知らずに育ち、潔癖症であった事もあった。
故にか、男は人と触れ合うのが苦手であった。

転職し間もなく、男はそこの同僚達と打ち解けていた。
都合が合えば、会社近くの駅前の飲み屋に行ってはしゃいだ。
この頃の男は、論理的で仕事だけを愛していた。

男の新しい職場は開発部。
云わば、何も無いところから自動装置を創る仕事であった。
男は、そこで創られる自動装置の経験を買われたのであった。
男に出来る事ならば、文字通り、何でも屋のように仕事をした。
それ故か、同僚からの信頼も厚く、頼られる事も少なくなかったのだった。

そんな矢先に男が出合ったのが、同じ部内の別チームに居た先輩であった。

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2009年7月 1日 (水曜日)

残照

時は多少戻り、海老名駅前のシティホテルのロビー。
男は、この紳士と会うのは始めてであった。

ある日、男のデスクに電話が入った。
庶務の者は、取引先か何かと勘違いしたのだろうが、男は相手のことを知らなかった。

「いつか、直接お会いできる日はありませんか?」

名乗った後に、電話先の者はそうたずねた。
男は、冷静で好奇心旺盛を自負していただけあり、スケジュールを確認し会う約束をした。

こうして、男は転職する事になったのだった。

如何に男にとって有益な話であったとしても、多少、男には、裏切りではないのか、と言う疑念があった。
そんな男にも、同僚達は送別会を開いてくれると言ってくれた。

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2009年6月30日 (火曜日)

自暴自棄

男は、自らを冷静だと評していた。
所詮、男という生き物が多くそうである様に…
少なくとも当時のこの男は、冷静ではなかったろう。

男は考えた。
<仕事だけに打ち込もう>
これは、自暴自棄の始まりといっても良いだろう。
それから男は、毎夜午前3時から4時ほどまで仕事を続け、通常通り出勤するようになった。
勿論これは労働基準法違反だが、男は勤怠表とタイムカードを誤魔化していた。

それには、多少なりとも訳が在った。
男は、転職を控えており、引継ぎ事項も済ませていたが、なるべくなら担当していた装置を感性に腰でも近づけたいと思っていたのだった。

少なくとも、このときの男の仕事は冷静であり、正確であった。

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2009年6月29日 (月曜日)

下された罰

今日も、快調な音を立てるRS250。
それに跨る男は、気分が好かった。
なぜならば、臆病者の男には、当時<忘れる>という最大の武器があったからだ。
男は、吹っ切れたつもりであった。

そして、目撃の一見以来、それを吹っ切るかのように、軽快な2ストロークの味を愉しみながら通勤するのが、男の日課になっていた。
このイタリアの荒くれ馬は、フェラーリでも持ってこない限り、スタートダッシュでは速かった。
このときの男の楽しみといえば、そのロケットスタートに尽きる、といっても良かっただろう。
男が通勤路としていた国道129号線は、正にロケットスタートにうってつけでもあった。

かといって男は、スタートダッシュと加速を楽しむだけで、飛ばすことに興味はなかったようだが…

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2009年6月28日 (日曜日)

偶然の現実

男の趣味は、鉄道の写真を撮ることだった。
その日、男が選んだ被写体は「特急雷鳥」だった。
早暁からapriliaRS250を引きずり出し、のんびりと北上した。

途中からは、凍結の危険の少ない関越自動車道を使った。
天気も悪くない、絶好の写真日和だった。
最初に男が目指したのは、直江津駅だった。
その後の予定は、手製のダイヤグラムを元に地図にマーキングしており、時間通りに行動するつもりで居た。
彼の愛機は、minoltaのXD2にオートワインダーを備え、レンズはTamronのSICRO AUTOMATIC 23mm F3.5、鉄道写真を撮るには名玉と呼べるレンズを装着していた。
天候から選択したフィルムは、エクタクローム ISO 200だった。
男は、リバーサルフィルムが好きだった。

男は何を思ったか、突然金沢に行ってみたくなった。
糸魚川近辺で撮影した後に、糸魚川駅近くに愛車を止め、鉄路金沢に向かったのだった。
金沢は、男が別れを告げられた女の故郷である。

先日聞いた一言、

「見限っていない」

というのが気になったのだろうか…

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2009年6月25日 (木曜日)

暴かれた罪

男の職業は、機械設計屋だった。
この歳にしては珍しく、正しくは幸運な事に、現場からの叩き上げであった。
男の最初に就いた職は、生産管理部門の工程係であった。
ここで、もの造りの基本を学び、データーベースの基礎を自主的に学んだ。
工程係とは、生産工程が順調に収まる様にする調整役で、何でも屋的存在でもあった。
その後、設計部門に配属され、設計資料の収集からがファイリングなどの雑務を経て、今では装置全体の設計を任される様に成っていた。
皮肉なのは、その経緯が就職氷河期のしっぺ返しによる、人手不足であったことだろうか…

とにかく、男は自分の仕事にある程度の自負を抱いていた。

休日を終え、月曜日を迎た。
男は、臆病者であるし仕事には責任を持つという自負があったため、どういう心境であれ出社せざるを得なかった。
社会人としては当たり前の行為ではあるが、問題は彼女も同じ職場に居る事だった。

とは言え男には、公私混同せず職分を弁える、という考えも在ったのだろう。

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罪と罰

同題の小説がある。
キリスト教的解釈をすれば、主人公は自殺したかったと言う事になる。

男は、斜陽を浴びる国道16号線を北に向かった。
確かにその方角は、男の家のある方面であった。
しかし、男は真っ直ぐに帰宅しなかった。

国道16号線は、橋本のあたりで津久井湖方面に向かう国道413号線と交差する。
男は、これを津久井方面に曲がった。が、目的地は津久井ではなかった。
男が向かったのは、今はもう幹線とは隔離した、城山橋だった。
その先の、高速ワインディングがいたく気に入っていたのだった。

飽きることなく、数キロにも及ばない区間を何往復もした。
何往復しても、心の隙間の様なものを、埋めることは出来なかった。

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白日の相模原、そして夕陽

男は立ち尽くしていた…
ここは相模原、目抜き通り沿いのファミリーレストランの前。
季節は、まだ空気が澄んだ初春のことである。

右斜向かいには、男の嫌いな警察署が立っていたが、
男の視界には、そんなものを一切受け付ける事ができなかった。
男の視界は、白日の名の如く、真っ白だったのである。

周囲から見れば、滑稽な姿であったろう。
目じりからは涙を滲ませ、呆然と空を見つめる男の服装は、
季節に合わぬウォータープルーフのライディングジャケットに、
薄汚れたジーンズを吐き、その裾にはレーシングブーツを蓄えている。
更に、手には皮製のレーシンググローブと黒いラムエアダクトだらけのヘルメット。

男はピクリとも動かずに、呆然と肩を落として空を見上げているだけだ。

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